第1章 純潔
小麦色の仔犬を腕に抱えたまま、殺風景な高層マンションの自室へ帰ってきた。
仔犬を風呂場に下ろし、綺麗に洗ってやる。
「…って、お前真っ白だったんだな」
綺麗に汚れを落としてやると、それまで小麦色だった毛並みが、雲のような白い毛並みに変わった。
ドライヤーで乾かして、冷蔵庫に入っていた犬でも食べられる食材で餌を用意してやり、たらふく食わせた。
「また拾いもん…しちまったな」
俺も煙草と酒を用意して、餌を食べ続けている仔犬を見ながらぼんやりと呟いた。
正直、俺はこういうのに弱い。
捨てられている猫だとか犬だとか。
見つけてしまうと、拾ってしまうんだ。
もうこいつで、5匹目くらいになるんじゃないだろうか…。
だから相棒にもあんな事言われるんだろうけど、でも寂しそうな顔で見つめられると…助けを求められているようで、どうしても放っておけない。
無事に成長したら里親へ引き渡すし、俺がやってやれるのはそこまでだから。
「お前の名前、どうっすかな」
俺は、仔犬の頭を撫でながらこいつの名前を考えてみる。
どうせ里親に引き渡すんだし、ここに居る間の一時的な名前だから何でも良いんだけど…。
「じゃあ、お前真っ白だから…シロだな」
『きゃぅんっ…!』
俺がそう呼んで、身体を撫でくり回せば元気よく返事をしてくれる。
自分の手で相手を幸せに導いてやるのは、こんなにも楽しい…。