第1章 純潔
自分の信念ってのは、どこにあるのかと…散々相棒と語り合った末。
店を出る頃には、空は明るくなり始めていた。
和「…どうも朝ってのは嫌いだ」
「俺もだよ…」
和「自分らには当たっちゃいけないもん、ですもんねぇ」
「だな…」
俺と相棒は、それ以上何も語らずただ白けてきた空を呆然と眺めていた。
どれくらいそうしていただろう。
自分のしている腕時計のアラームが鳴った時、ひとつの鳴き声が俺の背後から響いた。
『くぅん…わんっ』
「仔犬、か…」
和「え…?」
俺はダンボールに入った、小麦色の仔犬に歩み寄った。それに相棒もついてくる。
その仔犬は、俺が近寄るとぶんぶんと尻尾を振り、舌を出して目をきらきらと輝かせた。
「お前、可愛いな…」
和「えぇ、ちょっと潤…?」
俺が仔犬を抱き抱え、頭と身体を撫で回してやれば仔犬は嬉しそうにまた尻尾を振る。
そんな様子を見ていた相棒が、呆れたように俺の肩を叩いて言った。
和「あんたまたそんなの拾って…いずれ、とんでもないもん拾いますよ?」
「なんだよ、とんでもないもんって」
和「厄介事を運んでくるもんとかですよ、拾い物も程々にしときなさいよ?」
そう言って相棒は、後ろ手に手をひらひらと振りながら、帰って行った。
俺は腕の中に居る仔犬と目を合わせ、頭を人撫でしてやるとそのままその場を立った。
「よし、今から俺ん家行こうな」