第1章 純潔
タクシーから降りて、少年の手を握りながらホテルへ向かう。 ボロボロの服と傷だらけの足は早く、カズにどうにかしてもらわないと…。
そう考えながら、人目につかないようエレベーターに乗り、自分達の宿泊する部屋へと向かった。
その道中もずっと、少年は黙ったまま…ただ俺についてくる。
怯えてんのか、こういう所に慣れてないのか。
辺りをきょろきょろと見渡しては、すぐに俯く。
一体何がしたいんだか…。
俺は、少しだけ呆れながら部屋の鍵をカードキーで開け、少年を先に部屋の中へ押し込んだ。
その後から俺も部屋に入り、後ろ手でドアを閉めると少年の背中をそっと押す。
「何もしねぇから、奥に進みな…」
『は、はい…』
そっと触れた背中からは、少年の心の内が見えるようで…緊張して怯えているのが伝わってくる。
少年の背中を押しながら、ゆっくりと奥へ進めばダブルベッドが2つ置いてある片方のベッドに、腰掛けて貧乏揺すりをしている相棒の姿が見えてきた。
「なんだ、先に来てたのか」
和「なんだじゃないでしょうよ、その子…なんです?」
「拾いもん…」
俺がそう答えると、カズは大きく溜め息を吐き、俺の方に歩み寄ってきた。
和「私言いましたよね?…この子、明らかに厄介事の塊じゃねぇですか」
「悪い…」
和「ああ、もう…拾っちまったもんは仕方ないっすけど…君、名前はなんて言うの?」
カズは俺から視線を外すと、おどおどしていた少年へ優しく声をかけた。
すると少年は、ビクビクしながらもか細い声で、自分の名前を言葉にして紡いだ。
『しょ、翔…です』