第1章 純潔
俺は相棒が吐き出した本音を、そう広くもない心で受け止めた。
確かに、こいつの言ってることは当たっているのかもしれない。もしかしたら、それが正解なのかもしれない。
俺達のやってる事は、表沙汰で処分出来ないようなことを、裏の法を通して罰している。
ただそれだけ…。
けれど、それがなんだって言うんだ。
「だからなんだよ…」
和「え…」
俺は相棒に自分の思いと考えをぶちまけてみた。
価値観が違うから、考える事も思う事も違う。
でも、俺の思いや考えが…相棒の悩みを少しでも晴らすというのであれば、何度だって語ってやるよ。
「確かにお前の言う通り、俺達のやってる事は悪党と同じかもしれない…実際人を殺めて、己の手を血で汚してる」
和「うん…」
「けどそれが仕事だって言われてきたろ…国の為、人々の為、そんな風に言ってもらえるだけマシじゃねぇのか」
和「そう、なのかな…」
カズは俺の投げ掛ける言葉を、不思議そうに聞きながら俺の言葉の続きを待っていた。
「俺にだって何が正解かなんて分かりゃしねぇよ…でも、俺は言われた事をやるだけだ、俺らの国を穢すクズ共を殺す。ただそんだけだ」
和「…」
相棒は何かを考え込むような表情をした後、すっと顔を上げていつもの気味の悪い笑顔で笑った。
和「…そうですね、私らはそれで食いっぱぐれずに済んでんだから、己の使命を全うするだけですねぇ」
「ああ、だから悩んでんじゃねぇよ…らしくねぇ」
和「くくっ、あんたにそんな事言われる日が来るたぁ…私も落ちぶれましたかねぇ」
「年寄りくせぇよ…」
そう言って俺達は、グラスを酌み交わした。