第1章 純潔
【 潤view 】
俺は少年の手を左手で掴み、男達から引き剥がすと自分の後ろへ回るように手を引いた。
驚いて隙を見せた男達にそれぞれ、腹、鳩尾、頭に気絶するくらいの一撃を入れた。
ホームで蹲るようにして倒れた男達を確認して、背後に居るだろう少年へ視線を向ける。
『…あ、あの』
少年は余りの事で動揺してるのか、終始戸惑っていた。…けれど、ここで悠長にしている時間はない。
いつ、この男達が起き上がってもおかしくはないし、こいつら以外にまだ追手がいるかもしれないのだから。
俺は、その少年の白い手首を掴み力強く言うしかなかった。
「走るぞ、ガキ…っ」
『えっ…あ、ちょっ』
俺が少年と同じ言語を話せる事に驚いたのだろうが、今はその動揺を待っていられるほど余裕はない。
俺はホームに誰もいないことをいい事に、倒れている男達をそのままに駅から出た。
…仕方ない、俺達が泊まるホテルに連れていくしかないか。
駅を出た所でタクシーを捕まえようとしたんだが、ここが田舎故に駅にタクシーさえ一台も見当たらない。
「くっそ…」
辺りを見回して、自分が来た道を引き返そうと少年の手を引き、走り出そうとした時。
『…っつ、痛』
小さく呻くのが聞こえて、振り返った。
そしたら少年が自身の足を抑え、眉間に皺を寄せている。
「怪我、してんのか…」
見れば少年の足は所々に血が滲み、ボロボロだった。…これじゃ歩けもしないな。
「痛むんだな、よし…乗れ」
『え…』
「良いから乗れっ、また追われたいのか」
『は、はい…っ』
俺は無理矢理少年を自分の背中へ乗せた…。