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明日、君が消えても【気象系BL】

第1章 純潔




戸惑い続ける男が僕の肩へそっと手を置いた時、階段の方から追手の迫ってくる足音が聞こえた。

…やっぱり、まだ僕を追ってくる。
そう簡単には見逃してくれない。

それに気付いた男へ、僕はもう一度助けを求めた。

…けれど男は、悲しそうな目をした後。


「Sorry…」


とだけ言って、首を横に振った。

僕は愕然とすると同時に、納得もしていた。
そりゃ、見ず知らずの…こんな訳の分からない子供を助けたところで、男には迷惑しかかけることが出来ない。

多くの大人がそうするだろう…。
皆、好奇の目で見るだけ見て、後は他人事なんだ。

当然の事だと思う。

でも、それより何より…っ。


『…どうしてっ』


僕を振り払ってホームの端へ移動した男に向けてではなく、僕は自分自身にそう吐き捨てた。

どうして僕がこんな目に合わなければならない。
どうして僕はこんなに走り続けなければならない。

僕はそんな想いを振り切るようにして、また改札に向けて階段を登った。

でも勢い良く階段をかけ登った事で、僕の体力にも限界が来ていた。


『…っ、う、動けっ…動けよっ、僕の足っ』


僕は足を叩いて奮い立たせようとしたけど…もう遅かった。


《どこまで逃げても同じだ…》

『…っ!嫌っ、やめてっ…離してっ』

《さぁ、帰るぞ》

『…嫌っ、もう戻りたくない…っ』


その時、さっきホームに居た男と目が合った。
ああ、戻ってきてくれたんだ。
こんな僕を心配して…。

そう思った僕は再び、その男へ手を伸ばす。


『Help me…ッッ!』


そしたら男も僕に手を伸ばし返して来て。


「そいつを返して貰おうか…っ」


僕の身体を引き上げてくれたんだ…。







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