第1章 純潔
【 少年view 】
『…っは、はぁっ、くっ』
先も見えない。
長い長い道を、ただ走って。
走って走って走って…。
何度も後ろを振り返っては、追手を確認する。
どうして僕を追うの。
どうして僕を解放してくれないの。
…どうして、どうしてっ。
『…っ、嫌っ…も、嫌っ』
知りもしない道を裸足で走れば、人の目に晒される。
怪奇そうな目で、僕を見るんだ。
そんなの僕だってこんな姿で、訳も分からない所なんか走りたくないよ…。
でも、でも。
こうでもしないと、僕は一生あの場所に居続けるだけ。
そんなのは絶対にごめんだ。
田舎のようなこの地で、やっと駅を見つけた。
けどだからって、電車に乗ってどこかに行けるお金も土地勘もない。
それに僕…電車の乗り方も知らないや。
それでも駅に行けば誰かに救って貰えるかもしれないと、そう思った僕は改札を飛び越え、階段を駆け下りた。
そしたらホームに一人、電車を待っている男の姿を見つけた。
僕は目一杯息を吸い込んで、男に向かって叫ぶ。
『Help me!Help me!』
その男は、僕を見ると驚いた様子で…その隙にその男の身体へ飛び込んだ。
「…っく」
衝撃に耐えた男は、苦しそうに僕の事を見ると、怪しむように眉間に皺を寄せた。
『Help me…Help me…』
それでも僕は言葉を言い続ける。
だって、この言葉しか僕…助けを求める方法を知らないんだもん。