第1章 純潔
目的の地へ降り立った後、空港でカズが上司に言伝された事を俺に告げた。
和「潜入先への下準備は整ってる、まだ猶予があるから少しの間でもバカンスして来い、だそうですよ」
「上もお気楽なもんだな…」
和「そうですよ、こんな大事私らに押し付けといて」
「はっ、言えてるよ」
俺とカズは、そこで別れ俺は少し街を探索してみようと地下鉄駅で電車を待っていた。
余り不用意に動くのも怖いが、折角異国の地に降り立ったんだ。楽しまなきゃ損ってもんだろう。
俺は自身の携帯でこの国の事を軽く調べながら、女と遊べる所があるだろうかと浮き足立てていた。
「…にしても、全く電車が来やしねえ」
掲示板を見ても、目的の電車が来るのはおよそ20分後。
どれだけの田舎なんだよ、なんて舌打ちしそうになった時、改札からホームへ繋がる階段が、やけに騒がしくなり始めた。
俺は振り返って辺りを見回してみるけど、俺以外に人は誰もいない。
こんな真昼間から酔っぱらいが騒動でも起こしているんだと思い込んだ俺は、再び目線を携帯へ戻した。
《――Help me! Help me!》
「は?」
大きな声で助けを求める外人の声がして、もう一度階段の方へ振り返った時――。
「…っく」
物凄い力で『何か』が俺の腹に衝突してきた。
その『何か』の正体が。
《Help me…Help me…》
さっきからずっと俺の身体にしがみついて、ガタガタと震えている白い少年だった…。