【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第8章 橙色 - daidaiiro -
すると、突然、
「家康、起きてるか?」
「見舞いに来たぞ。」
「「…!」」
障子が開けられて、政宗さんと秀吉さんが入ってきて、仲良くみんなで固まる。
まずい、そう思ってすぐ手は引っ込めたけど、布団の上で二人で向かい合って座っているこの状況を、この二人が見逃すはずがない。
「なあにやってんだ、お前ら。」
「…別に、なにもしてません。」
「へーえ、」
ニヤニヤと笑いながら二人が布団の側に腰を下ろす。
亜子も気まずそうに、布団から退き、二人とは反対側に腰掛けた。光秀さんや、信長様に面白がって話さないといいけど、そんなことを思いながら、布団を腰まで引っ張り上げる。
「随分元気になったみたいだな、家康。」
「…何しにきたんですか、」
「言っただろ、見舞いだって。」
うまいもの食って精をつけて、さっさと復帰しろ。
そう言って政宗さんが広げた重箱には、上の段に、一口大の数種類の焼き魚。彩りのいい根菜の煮しめ、お漬物、ごま塩のおにぎり。下の段には、きなこもちがたっぷり詰められていた。
差し出された箸を受け取り、煮物を頬張る。
重箱を覗き込んで、わあっとよだれが垂れそうなくらい目を輝かせている亜子に気づいた政宗さんは、亜子にも嬉しそうに箸を渡した。
「お前も食べろ。いい顔して食いそうだ。」
「…え、でも、」
「遠慮するな。でも、上の段は食べるなよ。コレは家康専用だ。事前に辛さを増してある。」
「別に、そんなに辛くなんてないですよ。」
「そりゃお前だけだ。」
言われた通り下の段に詰められたきなこ餅を頬張った亜子は、幸せそうに頬を染める。