【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第8章 橙色 - daidaiiro -
俺の表情を見て怒りを感じたのか、掠れる声で、
「…ごめん、なさい」
亜子がそう謝るから、
しまった、と思う。この子に怒ってるわけじゃない。
怒っているのは自分自身だ。
もう二度と、誰にも屈しないと誓ったのに。
俺はまだこんなにも弱い。
悠然と構える信長様を見て、その弱さを突きつけられたみたいで、堪らなくなって、つい目の前にいる亜子に怒りを曝け出してしまう。
女の前で、なんて思うけど、
不安げに、それでも一生懸命俺の話を聞いてくれるから、ついベラベラと話してしまった。
「…家康様は弱くなんてありません。」
「…お願いですから、家康様のその優しさと強さを否定しないでください。」
一通り俺の話を聞いて、
力強く言ったそう彼女の言葉。
根拠もないし、説得力もまるでない。訳のわからないことばかり言ってるのに。何故、こんなにも縋ってしまいたいと思うのか。
気がつけば、
その大きな瞳からポロポロと溢れる涙を拭っていた。
瞬間、空気が色濃くなるのを感じる。
「亜子といると、調子狂う。」
久しぶりに名前を呼べば、
心臓がどくどくと音を立てて動き始める。
自然と手が、彼女の頬を包んでいて、言葉を交わすことも出来ずに見つめ合っていた。