【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第17章 浅蘇芳 - asasuou -
「…家康様もついに、と思ったのですがね。」
「………。」
「噂のお相手が萩姫様とお聞きして直ぐに嘘だと思いましたよ。…まあ色仕掛けでもおされになって、気の迷いが生じてもおかしくは無いと思いましたが、」
「……おい、」
「いや、分かっております。家康様に限ってそれはない、と。」
ですが、人の恋路の噂は美味しい。
「それが国の主となると余計にです。火消しに回っていますが、まだ完全には。」
「…分かってる。でも話が早くて助かった。」
「この噂の出所の調査は?」
「いや、それはいい。どうせ萩姫の仕業だ。」
どんな意図で、
こんなにすぐバレそうな嘘を、俺の領地にまで広めたのかは分からないけど、萩姫にも事実を確認しに行かなければならない。
…本当に余計な仕事を増やしてくれる。
橙色の着物を翻して、ニヤリと笑うあの萩姫の胡散臭い笑みを思い浮かべたら吐き気がした。
「…お前には言っておくけど、」
「はい?」
「俺には他に相手がいる。この変な噂とか、その他に全ての事が片付いたら、その子を迎え入れる。だからそのつもりでいて。」
「…!なんと、いつの間にその様な方が、」
萩姫のこと、
亜子がこの時代にきた原因のわーむほーる、
あの子を気に入っている信長様…、
解決しなきゃならないことは多いけど、
全て片付いたら、あの子とこの国で暮らしていきたい。そう考えていることを正信に伝えたら、まるで祭でも始まるかの様に一人で盛り上がり、意気込んだ。
「この正信にお任せ下さい!早々に解決致します!」
早く姫様をお連れになって下さい!
そう言って、なんなら安土にまで見に来そうな勢いだったから、それを素っ気なく交わして退出させた。
しばらく国の様子を見たら、
また安土に戻って、
それから、萩姫に会いに行かなければならない。
佐助に話も聞きに行かなければならないし、亜子の心が決まったら信長様たちに亜子のあの不思議な話をしなきゃならない。
手放しに幸せに浸れるのは、
一体いつになるだろう。
深くため息をついて、久しぶりに帰ってきた自分の城の天井を見つめた。