• テキストサイズ

【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -

第8章 橙色 - daidaiiro -





徳川家康。

彼は江戸幕府を開いた人。
織田信長、豊臣秀吉の元で天下統一を目指すも、二人が死んだ後、関ヶ原の戦いに勝利し、平和な世を作り上げる人。

そればかりが頭に残っていて、人質として幼少期を過ごしたなんて話は覚えていない。教科書に載っていたとしても、何も心に留めなかったんだろう。

表情は淡々としている冷たい声に怒りが滲んで、
苦しげにかすれる。




「…そんな奴らにまた、あっさり捕まって、いいようになぶられて…俺は、俺が許せない。」
「……っ、」
「今川家が滅びて自由になった日、二度と誰にも屈しないって誓った。なのに、まだ、こんなに、弱い。あんたに怒ってるんじゃなくて、あっさり踏みにじられるような自分が、許せないんだ。」




そんなことを、ずっと考えていたの?

この途方も無い怒りが、傷だらけの自分自身に向けられているのだと思うと、胸がきしんだ。

いつも淡々と振る舞って、自分の周りに壁を作り誰も近寄らせようとしない、この人が…心の中に熱の塊を抱いているのだと、初めて気付く。






「…家康様は弱くなんてありません。」






ふと、口から無意識に溢れた言葉に、

家康様はギロッと私に厳しい目線を向ける。その視線を受け止めて、ゆっくりと言葉をつないだ。





「…人質として幼い頃から、心折れずに何年も何年も耐えぬいて、私にはそんなこと出来ません。
そんなに強いのに自分を責めないでください。」
「…俺の話、聞いてた?強くないから今、俺はこうしてまともに動けずにいるんだよ。」
「家康様が敵に捕まったのは、怪我をした従者を守るためだと聞きました。…弱いせいじゃないです。」
「…家臣を守るのは、強さじゃない。ただの義務。家臣を守ったうえで勝つまでが、将の努めだ。」
「それでも、」



/ 240ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp