【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第8章 橙色 - daidaiiro -
家康様をいらない、と言ったのは信長様なりに心配してかけた言葉なんだと、彼の不器用な優しさを感じつつ、恐る恐るその場に正座した。
「………、」
「数日間姿を見せなかったのに、いきなりどうしたの。」
「…信長様に、呼ばれて。」
「ふうん。」
冷たい声につい言い訳するように答える。
本当は心配してました。毎日、何かしてないとずっと心配でそわそわしてしまうくらいに。でも、そんなこと言っても迷惑だろう。
そう思って、目線を下げる。
布団の柄が目に焼き付いてしまいそうなくらい、気まずい雰囲気の中、腹立たしげな表情をした家康様が布団をめくり、急に立ち上がろうとした。
「…なにしてるんですかっ?」
「城に行く。いつまでも寝てられない。」
「でも、」
「………っ」
踏み出した足がガクッと沈み、彼の身体が傾く。
反射的に駆け寄るけれど、支えきれずに身体が揺らいだ。
「「…!」」
もつれ合って、同時にふたりで布団へ倒れこむ。
とっさに腕をついた家康様の身体が、私の上に覆いかぶさった。慌てて起き上がろうとするけれど、家康さんはそのままの姿勢で動かず、私を睨んだ。
「…余計なこと、しないでくれる。あんたの手助けなんて、いらない。」
「…ッ、」
鋭い声が、胸にざっくり突き刺さる。見上げた家康様の瞳には、見たこともないくらい激しい怒りの色が浮かんでいた。
恨まれても、嫌われても、仕方ない。
そう心に何度も何度も言い聞かせたのに、実際にその怒りを目の前にすると、胸が痛くて仕方ない。
「…ごめん、なさい」
怒りに満ちた眼差しを受け止めたまま、
かすれる声を絞り出した。