【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第2章 月白 - geppaku -
よく見ると私の着ていたワンピースは、裾が焼けているし、鏡を覗けば顔には煤がたくさんついている。必死で何も気づかなかった。
何もかもが現代とは違う。
天国か地獄かとも思ったけど、どうやらこれが現実で、私は何故か戦国時代にタイムスリップさせられたのだ。
「…どうしたらいいの。」
呟いても、誰も解決策なんて出してくれない。
うじうじと天幕にいるわけにも行かなくて、意を決して外に出たら、織田信長、石田三成、そしてもう一人白い髪をした男性が待ち構えていた。
「ほう、幾分か見れるようになったな。」
「亜子様、気は落ち着かれましたか?」
心配するように私に声をかけてくれる石田三成と違って、織田信長ともう一人の男性は私を品定めするように観察する。冷たい織田信長の瞳と、なんだか危うい光を宿すもう一人の瞳。
「…確かに、間者にしては弱そうだ。」
「間者であるなら俺を刺客から救うことは無いだろう。」
「いえ、分かりませんよ信長様。油断させて取り入ろうとしれいるのかもしれません。」
「貴様、俺の見る目を疑うのか?」
「滅相もありません。ただ狐の皮を被っているかもしれぬ、と申し上げただけで御座います。」
私を目の前に交わされる言葉に居心地が悪くて冷や汗が流れる。
「亜子様、この方は明智光秀様です。」
「…え?」
信長様の御命が危ないと聞き駆けつけてくださったのですよ、と丁寧に説明してくれる石田三成。
でも、これじゃあまるで史実と違う。
明智光秀は、本能寺の変で織田信長を裏切った張本人のはず。それなのに、彼の真っ白い着物には煤一つついていない。それに私が炎の中で見た人影とは違う。どういうこと、?私の知っている歴史が間違っていたの?それとも、私がここに来たことで歴史が変わった?