【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第2章 月白 - geppaku -
なんて考えていた時だった。
一人男性が勢いよくこちらに駆け寄ってくる。
「信長様!お怪我はありませんか!」
「秀吉か。大事ない。賊は取り逃がしたがな。」
「…そうですか。」
「この女は、俺の命の恩人だ。」
…秀吉、豊臣秀吉。史実通り、織田信長に忠誠を尽くす人という雰囲気をひしひしと感じる。
その証拠に私を見る目はすごく冷たい。
織田信長の瞳も冷たいし、明智光秀の瞳も私を品定めしているような感じだった。けれど豊臣秀吉、彼の目は誰よりも私を疑うような目をしてる。確かに私はいきなり本能寺にやってきて、織田信長の命を助けたとはいえ、素性の分からない女。
「…信長様の御命を救った?」
「そうだ。」
「お前、何の目論見で信長様に近づいた?」
「…秀吉、そこまでにしておけ。」
「ですが、信長様!この薄暗い夜、わざわざ信長様の御命が危ない時にいた素性の分からない女など信用できません。それに、光秀、お前も御館様に後ろ暗いところがないと誓えるか?」
「やめろ、秀吉。お前は少々黙っておれ。」
「亜子、口は聞けるようになったか。」
「…はい。」
私自身がタイムスリップしてこの時代にやってきたのを信じられないように、彼らにこのことを説明しても信じてはもらえないだろう。
間者と疑われるくらいなら織田信長の言うことを聞いておいた方がいい気がする。そう思ったのに、
「秀吉や光秀が疑うのも無理ないが、この女は命の恩人だ。幸いを運ぶ女に違いない。気に入った。
貴様、天下人の女になる気は無いか?」
腰を抱き寄せられて、そんなことを言われから、頭の中が真っ白になり、腕の中から逃げ出すと、そのまま森の方へひたすらに走った。