【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第7章 潤色 - urumiiro -
ずっとそうしているうちにいつの間にか夜が明けた。
「亜子様…」
「…、」
「お眠りにならなかったのですか…?」
朝餉持ち部屋にやってきた篠さんは、綺麗なままの褥を見て心配そうに声をかけて来る。
膝に埋めた顔を上げると、
陽の光が部屋にいっぱい入ってきていて、眩しくて目を細めた。きっと、酷い顔をしてるだろう。篠さんは優しく私の頭を撫でながら、
「一度お眠りになって下さい。」
と言うけれど、それに小さく首を振る。
「…亜子様。その様子では、家康様が目覚められたら心配なさいます。それに、亜子様まで倒れられてしまいます。」
心配そうに優しくなだめるように、
でもいくら篠さんにそう言われても、私は褥に入ろうとはしなかった。すると、開けっ放しだった襖からいつの間にか入ってきていた秀吉さんに、抱き上げられて褥に寝かされる。あまりの突然のことに抵抗すらできなくて。
「…寝ろ。」
家康が起きてお前がその顔だったら心配する。そう言って、秀吉さんは私のおでこと瞼をそっと手で覆った。
それでもまだ起きようとすると、
「お前が気を張り詰めても仕方ない。あいつは絶対大丈夫だから、起きた時に元気な姿でいないでどうする。
…そんなに心配ならあいつが目を覚ましてから精一杯世話を焼いてやれ。」
そう言って私を褥の外に出さなかった。
しばらくして、観念して目を瞑る。全然眠たくならないけど、秀吉さんは私が起きていたら怒るだろうし、大人しく褥の中で目を瞑っていた。
家康様が許してくれるなら、精一杯お世話をさせて貰うつもりだ。でも、彼が目を覚ますまで気をぬくことは出来なかった。
何も出来ない自分の無力さを痛感して、寝転んではいたものの結局一睡もできなくて。そのまま、ひたすら耐えていると、昼過ぎに、やっと家康様の御殿に帰る許可が出た。