【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第7章 潤色 - urumiiro -
ふと、現代にいる両親の顔が頭に過ぎる。
タイムスリップしてから、もう何日も経っているけれど、両親は私が消えたことに気づいただろうか。連絡がつかなくて心配しているかもしれない。
けど、私には帰り方も、連絡の仕方も分からない。慌てふためく両親の姿を想像して、涙が出そうになるけど、
その時、バタバタと急に外があわただしくなった。
「…どうしたんだろう。」
「少し確認して参りますね。ついでに夕食もお持ちしましょう。」
「…あ、もうそんな時間なんですね。」
話すのに夢中で全然気づかなかった。
こんなにも長い引き止めていたことに申し訳なく思いながらも、襖を開けて出て行く篠さんを見送った。
それから、半刻ほどだっただろうか。
「…遅いな、篠さん。」
全く帰って来る様子のない篠さんを不思議に思い部屋を出た。バタバタと慌ただしく駆け回る家臣の方々や、女中さん達の姿を見て、
…家康様を見送った時感じた胸騒ぎが復活する。
何があったか聞きたいけれど、聞くのが怖くて、襖に手をかけたまま立ち尽くしていると、音もなくやってきた三成くんが声をかけてきた。
「…亜子様、」
「ぁ、みつなりくん、」
私の表情を見て、
「この騒ぎで気づかないはずがありませんね。」
そう言うと、まだお耳に入れたくは無かったのですが、と、その整った眉毛を寄せた三成くんが紡いだ言葉。それを聞いた途端、心臓が嫌に跳ね始める。
「家康様が、賊の手にかかり捕らえられました。
…家康様と信長様に、恨みを持っていた輩だったようです。私怨にかられて動いているようなので、何をしでかすか分からない状態です。信長様と光秀様が直々に救出に向かわれています。」
ドッドッ
と全身に勢いよく流れる血液。
ガタガタと震えて力が入らなくなる体。
三成くんの説明を聞きながら、ふっと体から力が抜けて倒れこむ。慌ててそれを抱きとめてくれた三成くんは、心配そうに私の顔色を覗きながら、
「私は医者を呼び、家康様の御殿に向かいます。」
…亜子様は今日は安土城にお泊まり下さい。
とそう言われて、どれほど酷い怪我を負っているのかとまた全身が凍りつく。