【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第7章 潤色 - urumiiro -
「亜子様!お久しぶりでございます。」
光秀さんと安土城に行くと、城門で篠さんが出迎えてくれた。久しぶりに見る篠さんの姿に嬉しくなって、思わず駆け寄って抱きつく。
「あらあら、」
「へへ、お久しぶりです、篠さん。」
微笑んで私を抱きとめてくれる篠さんと笑い合っていると、後ろから追いついて来た光秀さんが、まるで童のようだな、と揶揄ってくるから慌てて離れた。
「今日は城でゆっくりしてるといい。」
「…え?」
「俺は信長様と会議があるからな。」
「あ、」
あいにく構ってやれる暇がないんだ。
そう言った光秀さんは、私の頭をぽんと撫でると、私を残してスタスタと行ってしまった。それなら、私は家康様の御殿にいても良かったんじゃないだろうか、と思ったけれど、久しぶりに篠さんに会えたから、それでいいかと考えるのをやめた。
それからは、
篠さんと他愛のない話をして過ごした。
「お雪からたまに話は聞いています。弓術の稽古をなさっているのですね。」
「そうなんです、まだ下手だけど、」
「努力家の亜子様ならすぐ上達されますよ。」
「…あ、篠さん、ひとつお願いがあるんです。」
「はい。何なりとおっしゃってください。」
「私、着物を作りたくて…、」
「なら今から反物をご用意しましょう。すぐお仕立ていたします。」
「あ、そうじゃなくて…、自分で仕立てたくて。」
「あら、そうなのですね。畏まりました。なら針子の道具をご用意します。」
「家康様の御殿の女中のお手伝いもされているとか、」
「…何もしないと落ち着かないから、」
「ふふ、亜子様らしいです。」
「へへ、」
初さんもすごく包容力があって大好き。
でも、何だか故郷に帰ってきたみたいの暖かさがあってつい篠さんには、なんでも話してみてしまう。家康様と話していて思った、服を作ること、毎日のこと、この数週間にあったことをペラペラと話している間、篠さんは笑みを崩さず何でも聞いてくれた。