【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第7章 潤色 - urumiiro -
それをいそいそと耳につける私の様子を見る家康様の表情は、いつもより柔らかくて、くすぐったい。贈り物がというより、家康様の優しさが形になって現れたみたいでそれがすごく嬉しかった。
もう一度頭を下げてお礼を言おうと思ったその時、
「やれば出来るじゃないか、家康。」
玄関の戸を開き、光秀さんがニヤニヤ笑いながら顔をのぞかせた。
「っ…あんた、何立ち聞きしてるんですか。」
「邪魔しては悪いと思ってな。」
「…変な気回さないでください。じゃ、亜子の世話、任せましたよ。」
居心地悪そうに言った家康様はさっさと光秀さんの横を素通りした。その後ろ姿に、
「…家康様どうか気をつけて、」
「……行ってきます。」
そう声をかけると、わざわざ足を止めて私を振り返り、家康さんが淡々と告げる。
「まるで夫婦のようだな、お前たち。」
「は?…そういうの、ほんとやめてもらえますか。」
その様子をまたニヤニヤと見ていた光秀さんが、楽しそうにそうからかうから、すいっと顔を背け、家康様は肩を怒らせながら行ってしまった。
「あの様子じゃ、まんざらでもなさそうだぞ。」
なんて、彼の背中を見つめながら、今度は私を揶揄おうとするから、思わずむっと眉を寄せる。
けど、
「怒った顔も可愛いぞ。」
と、全く気にも留めない光秀さん。
「では、行くか。今日は一日城にいる予定だ。」
そう言って安土城に向かう光秀さんについて歩くけれど、心の中に、何故か不安と違和感が残る。この妙な胸騒ぎがただの杞憂に終わればいい。
見えなくなった家康様の背を探すように、
私は何度も振り返った。