【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第7章 潤色 - urumiiro -
翌日。
「亜子、支度はできてる?」
「はい。」
「そう。もうすぐ、光秀さんが迎えに来る。あんたを光秀さんに渡したら、俺も行くから。」
「そうですか………、」
昨日、変な空気のまま別れたから、落ち着かない。
玄関口に二人で佇み、光秀さんを待っていると、家康さんがどこかそわそわした顔で、私を見ていた。不思議に思って見つめ返すと、はあと、ため息をついた彼が重たい口を開く。
「…手、出して。」
「え?」
「いいから、出して。」
「あの…、ここ最近は痣も作ってません。」
前も同じことを言われて軟膏を塗ってもらったし、一人で稽古をしている間に怪我してないか確認してるのかな、なんて思って、手を差し出した。
困惑しながら家康様を見つめていると、
何か決意したかのような表情でクルッと手の甲をひっくり返され、手のひらに何かが載せられた。
「耳飾り………?」
小さいけれど、なめらかな輝きを放つ耳飾りが、ちょこんと手のひらに乗っている。
「…深い意味は無いから。」
私が尋ねるより早く、家康さんが仏頂面で告げた。
「一人でも弓の稽古続けてるみたいだし、指南役として、たまにはねぎらってあげる。」
その言葉に驚きと嬉しさが隠せない。
全く気にしていないみたいだったのに、あの日、秀吉さんに言われたこと気にしていてくれたのかな。
そっとそれを指でもってみると、その小さな玉には、黄色い小花模様が繊細に描かれていて。もしかして、昨日あの後買いに行ってくれたんだろうか。その小花は昨日見た花壇の花によく似ていた。
何だか胸が一杯になって、
「…っありがとうございます、嬉しいです。」
自然と上がる頬を抑えられない。