【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第7章 潤色 - urumiiro -
「…お気をつけて、」
震える声を絞り出してなんとか紡いだ言葉に、
「…だから、そういう顔やめなよ。」
と、家康様の手が伸びてきて、長い指先が無造作に私の頬を撫でた。
まるであやすように優しく撫でられて、
その指が触れた部分が熱を持つ。
「…深刻そうな顔は似合わない。
いつも通り笑っていたらいい。」
心臓がバクバクとなる音を聞きながら、かすれる声で
分かりました
と告げる。不意に、家康様が、我に返ったように目を見開いた。
「ッ…、」
真っ直ぐ刺さっていた目が逸らされるのと同時に、触れていた指先が素早く遠ざかる。
「…明日は、俺の代わりに光秀さんがあんたを見張ることになってる。光秀さんに迷惑かけないように気をつけなよ。じゃ。」
そう早口で告げ、
家康様はいつもの倍のスピードで歩き去った。
一体今のは何だったんだろう。
熱の残る頬を無意識のうちに手で覆って、その場にしゃがみこむ。駆け回るのに飽きたわさびが、また、甘えるように鼻先を擦り付けてくるまで、しばらく私はボーとしていた。