【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第7章 潤色 - urumiiro -
「そうだよ、花は眺めて楽しまないと。」
「…あんた、花、好きなの。」
「え?…ぁ、はい…綺麗だなって思います。」
「………ふうん、」
今日の家康様はどこか変だ。
私に関する質問なんてされたことなかったのに。
どこか違和感を感じながらも、彼の横顔を眺めていると、本題に入るのを忘れていた、と、言った彼の口からは、重たい内容が出てきた。
「…あんたを襲った浪人が見つかりそうだ。」
穏やかな雰囲気が嘘みたいに変わる。
「近くの山に、通行人を襲う野盗が出没するようになって…、その男が、あの夜あんたを襲った浪人と背格好がよく似てるらしい。明日、俺が捕縛しに行って確かめてくる。」
「家康様がですか…?」
「実際にあの男を目にしてるのは、俺だけだからね。敵は顔を隠したけど、姿形は覚えてる。相手は一人だし、さっさと捕まえて戻ってくる。半日もかからないはずだ。」
淡々と話す家康様の顔には怯えもためらいもない。
胸の奥に巣食うあの日の恐怖を思い出すと同時に、私が城を抜け出しさえしなければ、という後悔が襲ってくる。
「…すみません。」
「…あんたを襲ったから捉えるわけじゃないから。」
「…、それは、」
「あんたが、謝る必要はないよ。」
この御殿に移った日も、
私を気遣ってか、情報が漏洩していることに早く気付けて良かったと家康様は仰ったけど、私が抜け出さなければと、思わずにはいられない。
家康様自身が浪人を捉えに行かなければならなくしたのは、間違いなく私だ。