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【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -

第7章 潤色 - urumiiro -





安土城での軍議に参加してからしばらく、家康様は御殿を留守にする日々が続いた。

側近の方からは、私を襲った浪人の調査に忙しくしていると聞いている。一人で弓の稽古をしながら、女中さんのお手伝いをする毎日は、やっぱり外の世界と遮断されているのかもしれない。



「…ふう、」



戦、なんてない気がするもの。

そんなことを思いながら、縁側で休憩していると、トットットッと可愛らしい音を立てて子鹿が寄ってきた。



「…あ、子鹿ちゃん、元気?お腹減ったの?」



私の足に頭を擦り付けて甘えるその子の頭を撫でながら話しかけていると、

後ろからプッと吹き出す声が聞こえて振り返る。

そこには家康様が、笑いを堪えるように口元を手で覆って立っていた。なんだか恥ずかしくて、下を向くと、笑いが引っ込んだ彼がそばに寄ってくる。



「…鹿に話しかけても分かるわけない。」



それに子鹿ちゃんって、

と呆れたように言われて、体温がどんどん上がる。そんな私の様子に構わず、隣に座ると、彼は子鹿の頭を撫で始めた。



「…大分傷も治ったみたいだな、わさび。」
「……わさび?」
「………、」
「…この子の名前ですか?」



私に言葉が通じるわけないと言っておきながら、柔らかい雰囲気で話しかける彼に驚く。

それに、わさびって、



「だったら何?」
「…家康様が名付けたんですか?」



気まずそうに黙る彼の様子から見て、わさび、と名付けたのは彼なんだろう。

前は非常食と言っていたけれど、家康様がわさびを撫でる表情は穏やかで。その表情にドギマギしながら、私もわさびを撫で続ける。



「…本当に辛いのがお好きなんですね。」
「…まあね。」
「………、」
「…あんたが前作ったあれも、美味しかった。」
「…あ、っりがとう、ございます、」



だいぶん前に作った担々麺っぽいもの。

家康様が召し上がってるとは思わなくて驚いたけど、お口にあったみたいで素直に嬉しい。



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