【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第7章 潤色 - urumiiro -
…せめて消息だけは掴まないと、
と、考え込んでいると、
「ちょっ!あんた、何しに来たんですか!」
と慌てて叫ぶ幸の声がした。
ハッとして顔を上げると、優雅に笑う信玄様の姿があって驚く。幸い、謙信様の姿はないけど、敵の武将である武田信玄がここにいるのはすごくまずい。
「いや、気になる噂を聞いたからね。」
にこにこと笑う信玄様に、なんのために俺がこんなことしてると思ってるんですか!と幸村が怒りを露わにするけれど、信玄様は気にもとめていない。
武田信玄とその家臣の真田幸村。
ここにいてはいけなくて、出来るだけ目立たないように偵察しなければならないのに、ただでさえ目立つ二人がぎゃーぎゃーと言っているから、人目が付きそうだ。
「…どんな噂ですか?」
「んー?」
「おい、佐助、その前に信玄様を怒れよ!」
一先ず怒る幸村は置いておいて、信玄様にやって来た理由を尋ねると、
「安土に麗しい姫がいるみたいでな。」
とにやりと返ってきて、ハッとした。
「大名の間で噂になっているらしい。織田家ゆかりのお披露目されていない麗しい姫様がいる、と。」
折角だし、一目見れたらと思ってな、
そう言う信玄様の言葉も、あんたの女好きは病気です!敵の女に何興味持ってるんですか!と食ってかかる幸村の声も、俺には届いていなかった。
それは、
亜子さんのこと
だろう、と彼女の居場所をそればかり考えていた。