【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第7章 潤色 - urumiiro -
大きな戦が始まるかもしれない…、
緊迫した雰囲気はあるものの、恐怖といった感情をこの人たちからは感じられない。政宗さんに至っては、この状況を楽しんでいる気すらする。
いつどこで戦があるか分からない。
…そうだ、刀を交えるのが当たり前の世界。生きるためには人を殺めることも必要なこの世界に恐怖を感じて、あの日城を抜け出したのに。家康様の御殿の中で外の世界と遮断されて過ごすうちに、忘れかけていた。一歩外に出たとたん、こんなにも乱世だという事実を突きつけられるのに。
「……亜子、」
軍議を終えて、廊下に出ると、家康様が私のあとを追いかけてくる。
少し気まずそうに私の名前を呼ぶと、
「…その顔辞めなよ。」
「…え?」
能面みたいに強張ってる、と言われて顔に手を当てると確かに頬がカチコチに固まっていた。
「あんたが動じても仕方ない。」
「…はい。」
「そういう顔する必要はないよ。」
「……、」
…むりだ。
家康様はそう仰るけど、さっきの話を聞いたばかりで何も考えずにはいられないから、曖昧に笑って誤魔化していると、
「家康、その遠回しな物言いはそろそろ直せ。」
「…なんの話ですか?」
「“亜子は心配するな”と言いたいんだろ?」
「………、」
後ろからひょこっと現れた政宗さんが、私の頭をぽんと撫でる。彼の頭にも乗せられていた政宗さんの腕を、振りほどきながら微かに頬を染める家康様を見て目を見開く。
…政宗さんの言ったこと図星なのかな。