【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第7章 潤色 - urumiiro -
翌日、家康様と広間を訪れた私は、末座からみんなを見回した。左側に並ぶのは、政宗さんと光秀さん、そして、右側に並ぶのは、秀吉さんと三成くん…上座に座る信長様は今日も悠々と私達を見下ろしている。
私の隣りに座る家康様は信長様をじっと見据えると、口を開いた。
「改めて聞きますけど、この場に亜子がいる必要があるんですか?」
「構わん、この女の腑抜けた顔が久々に見たくなっただけだ。…光秀から全員に知らせがある。話せ。」
「はっ。」
光秀さんがうなずき、広間に集う武将達を見渡した。
「東方に放っていた斥候から妙な知らせが届いた。あの上杉謙信が生きている、と。」
「え?」
「どういうことだ。あの戦狂いは、四年も前に死んだはずだろう。」
「越後の界隈で妙な噂が流れているそうだ。上杉謙信と、武田信玄………死んだはずの二人が手を組み、宿敵である信長様の首を狙い、挙兵を目論んでいる、とな。」
急にがらりと変わった空気に息を殺す。
上杉謙信、武田信玄…。
私はタイムスリップしてきたあの日、この二人を確かにこの目で見た。そして、今の話を聞いて、不確かだったことが分かる。…佐助くんはやっぱり織田軍の敵側の忍びだったんだね。
…佐助くんには、もうしばらく会えてない。
もしかしてもしかすると、安土城から消えた私を探しているかもしれないけど、まだ会いに行けそうにもない。記憶を無くしていることになっているし、まだ私は逃げ出さないよう見張られているし。それに、敵側の人なら余計に…、
私が頭の中でぐるぐると考えていると、話はどんどん物騒な方向に進んでいっていた。
「早急に事実か確かめる必要があるな。」
「俺が探る。西方の守りはもう固め終わってるからな。噂が真なら、軍神とまで言われた謙信と手合わせが叶う。」
「その件…本能寺で信長様を襲った手勢とも、つながりがあるのでは?」
「いや、その線は薄いだろう。謙信なら、正面切って戦を挑んでくるはずだ。」
「だろうな。奴が闇討ちなどというまどろっこしい手を使うとは思えん。」
「……東方で大きな戦になる前に、他の謀反の芽は摘んでおかなきゃならないな。」
「本能寺で信長様を狙った賊と、亜子をさらおうとした浪人、ですね。」
「ああ。調査は進めている最中だと思うが、どっちも急げ。」
「わかってます。」