【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第6章 藍白 - aiziro -
それから毎日、空いてる時間に稽古をした。
「すっごいね。」
いくら厳しくしても、必死に食らいついてくるこの子の根性は認める。でも、びっくりするくらい、
「全く素質がない。」
しゅんと、項垂れるその子を、いつものように後ろから支えるように型を直していく。
なれない動きのせいか、あまりにも膝を震わせていた初日と比べたらだいぶマシになった方だけど。矢は飛ぶどころかすぐ手前に落ちるし、指先から離れた弦はいつも彼女の腕を弾く。
着物の袖で見えないけど、白いその腕には、たくさん青あざができてしまっているだろう。
「はあ、…力んでも仕方ないよ。力抜いて。」
型を整えて、すっと離れると、
彼女が弓を開く。すると飛距離は全くないけど、弦がしなって矢が飛んだ。その瞬間、その子は今度は嬉しそうにぱあっと顔を明るくする。
「…今日はここまで。」
「はい。」
「明日まで今の感じ覚えておきなよ。」
「分かりました。…ありがとうございます。」
そんなに矢が飛んだのが嬉しかったの?
ふわふわと笑う彼女から目が離せない。見れるようにはなってきたね、と素っ気なく言うと、家康様のおかげです、と素直に礼を言ってくるから小っ恥ずかしくなった。
弓を片付けて部屋に戻ると、
棚にしまってあった軟膏を取り出してあの子の部屋に向かう。青あざだらけになられたら見てられないし。急ぐ足を、そんな風に言い訳して。