【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第6章 藍白 - aiziro -
「…私にできることは全部やってみたくて。
今はまだ分からないことだらけですが、ずっと引きこもって部屋にいるより、何かしている方が自分でいられる気がします。それに、引きこもらず自ら動いた方が、周りの人達とも馴染める気がして…、だから女中さんたちのお手伝いもさせて頂いていました。
家康様が、私をよく思っていないのは知っています。
でも、せっかく稽古をつけて下さると仰ったので、少しでも近づけるきっかけとなればと思ったんです。お互い、目が合って、気まずい思いをするのは居心地が悪いと思って…。」
そこまで一息に言った彼女は、
まっすぐ俺の目を見ていた。無垢で汚れを知らないようなその瞳に見つめられて、思わず目をそらす。
俺には、この子が何を考えていようが関係ない。そう思っていたはずなのに、動機が気になるだなんて、少し熱でもあるのかもしれない。
「呆れた。」
俺なら、部屋の中にこもってじっと耐えている。
耐えて耐えて、自由になった時に相手に復讐する。馴れ合おうだなんて思わない。
…この子はこの世のことを知らなすぎる。
利用して利用されて、そんなことが当たり前の世の中だ。この子は今、この御殿で俺に監禁されているようなものなのに、俺と近付こうだなんて普通思わない。
呆れながら、それでもこの子が危なっかしくてほっておけない気がして、弓を手に持った。
「…まあ、あんたは能天気みたいだから、自分の身を守る方法くらい知っとくべきかもね。」
初めは型から。
後ろから、その小さな身体を包み込むように立って、正しい姿勢に直していく。
触れた身体が、あまりにも細く、
今にも壊れそうで。
心配、いや、ほっておけない、ううん、守らなきゃいけない、なんてそんな感情が生まれたことに、気づいたけれど、気づかないふりをして。
厳しく弓術の稽古をつけた。