【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第6章 藍白 - aiziro -
「お前何か原因に心当たりはないか?」
そう聞かれて、ハッとする。
御殿に移ってきた日、城下町で出会った大名。そういえばあいつは、ニタニタしながらあの子を見てた。噂好きの男だから、あまり情報を与えないようにしたつもりだけど、
そう秀吉さんに伝えると、
「…あいつの息子からも文が届いてるからな。」
「その線もあり得るということですね。」
「ああ。」
「引き続き、あの子を外に出さないよう気をつけます。」
そうしてくれ、と
神妙そうに秀吉さんは文をしまった。
「この文のことは、亜子には内緒にしておけよ。」
「分かってます。」
今、あの子に言っても混乱させるだけだろうし。
どういうわけか知らないけど、まだしばらくあの子は外に出してあげられない。逃げ出さないように見張られていると思ってるだけのあの子には酷かも知れないけど、まだ何も知らないままの方がいい。
次の日、
昨日決まった弓術の稽古に、その子はいつものように小袖を襷掛けにしてやってきた。その姿を見て、頭を抱える。
「ちょっと、それでやるつもり?」
「え?」
「掃除じゃないんだから、襷は外して。やる気があるのはいいけど、それなら袴でも履いてきなよ。」
「…あ、すみません。」
本当に弓術のことなんて一切知らないんだな、という感じのその子にため息を吐いて質問をする。
「弓術なんて、あんたには必要ないでしょ。」
「…、」
「何でやるって言ったの。」
「それは、」
戦に出る女武将でもない。
それに今は、仮にも姫だ。確かに己の価値を上げるために弓術をやる姫もいる。でもこの子にはそんなのまるで似合わない。まだ家事をやっている方が似合う。
そんな子が何で弓術の稽古を受けることにしたのか単純に動機が気になった。