【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第6章 藍白 - aiziro -
三成と御殿に帰ると、
御殿の奥からドタドタと床を掛ける音がした。御殿中に響くその音を不審に思って女中に尋ねると、
「亜子様が、」
廊下を掃除して下さっているのです。
と申し訳なさそうに言うから、思わず三成と顔を見合わせてしまった。急いでその音がする方へ行くと、髪を一つにまとめて、小袖を襷でまくりあげたその子が廊下に這いつくばっていた。
「何してるの…。」
思わず声をかけると、ハッとして立ち上がった彼女は、気まずそうに目をそらす。
「…何であんたが掃除してるの。」
「それは、…その、時間を持て余してしまって。ご迷惑でしょうか、」
「別に。何をしてようが俺には関係ない。」
「………そう、ですか、」
一応、姫なんだからそんなことしなくていい。
そう言おうか迷ったけれどやめた。女中たちは、この子にそんな事をさせるわけにはいかないと思いながらも、微笑ましく眺めているようだし。それに、俺にはこの子が何をしようが関係ない…。
俺の様子を伺うように体を縮めているから、なんだか虐めているような気分になって顔をそらした。
「…三成と勉強するんでしょ、とっとと行きなよ。」
「え、もうそんな時間ですか?」
「いえ、私が少し早く着いてしまったのです。ゆっくり準備して頂いて結構ですよ。」
「わ、ごめんね、三成くん。」
すぐ準備します、
とパタパタとかけていったその子の後ろ姿を眺めてから床に目を落とす。さっきまで這いつくばって磨いていた床は、埃一つ見当たらないくらい輝いていた。