【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第6章 藍白 - aiziro -
なんて、油断してたら、
「…何この料理。」
「ふふ、よく混ぜて召し上がって下さい。」
「混ぜる?」
「亜子様がお作りになったのです。美味しいですよ。」
「…は?」
にこにこと微笑む女中頭の初を見て、ため息をつく。
初には早く奥方様のお世話をしたいと常々言われてきた。あの子は奥方じゃないとはいえ、女の面倒が見れて嬉しさを隠せないといった雰囲気に、呆れる。
「…なんて事させてんの。」
「あら、良いではありませんか。」
「甘やかすなって言ったよね。」
「甘やかしてはおりませんよ。亜子様は、自分のことは自分でやると言って、あまりお世話をさせて下さいませんし。」
「………、」
「外出をなさる様子もありません。」
料理くらい良いではありませんか、と、
微笑みを崩さない初にもう何も言い返せなくて、静かに箸を取る。言われた通り、麺をよく混ぜてから口に運ぶと、山椒の辛味と味噌のような味が仄かに口の中に広がって、本当にあの子が作ったのかと疑いを隠せない。
そんな俺の様子を見て、くすりと笑うと、
「亜子様は、この料理を家康様のお好きな山椒を見て思いつかれたようですよ。」
「…ふうん、」
「お口に合いましたでしょう。」
「…まあまあだね。まあでも、料理の才があるのは認める。」
「ふふ、…家康様も亜子様ともっと接する機会をお作りになっては如何ですか?素敵な方ですよ。」
「……それは、」
断る、
そう冷たく言ったのに、初はくすりとまた笑って、空になった御膳を持って出て行った。