【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第2章 月白 - geppaku -
体が重たい。
意識が朦朧とする。
何処からが焦げ臭い匂いを感じる。
だんだん意識がはっきりとしていくとともに、体に刺さるような熱を感じて、恐る恐る目を開けた。
「…え?」
目の前に広がる赤い炎に思わずゴクリと喉を鳴らす。
重力や、熱、匂い、そして僅かな体の痛み。これらをはっきり感じるから、私はだぶんまだ死んではない。死んだら五感がなくなるというもの。
何が何だか分からないけど、ただ一つ言えること。
ここはさっきまで私のいた本能寺の跡地とは違う場所で、何処かは分からないけど、燃え盛る建物の中に閉じ込められているということ。
シャリン
意識が戻ったばかりであまり働かない頭をフル回転させていると、燃える炎の中から鈴の音のようなものが聴こえてきた。
シャリン
もう一度。
耳を澄ましてその音の方に目を向けると、ゆらり、炎の向こうに杖のようなものを構えた人影が見えた。そしてその影の横に、柱に身をもたれて眠る人影も。
キラリ
と、杖の先が人影に向かっていくのを見て、
私は反射的に、
「っ危ない!!!」
そう叫んでいた。
そこからは無我夢中であまり記憶がない。
私の方に向かってきた人影から逃げるように走って、眠っていた人を叩き起こして、炎の外へと飛び出した。外の新鮮な空気を吸ってやっと、恐怖で足が震え始める。
「ーおい、女。手を離せ。」
浅く呼吸を繰り返していると、上から低い声が降ってきて、その時始めて私がその人の手を握りしめていることに気づいた。
「あ、すみません…、」
「…どうやら俺は貴様に命を救われたらしい。」
慌てて手を離すと、彼は私を観察するように眺める。
「フッ、無謀な輩が居たものだ。護衛全員を手に掛けるとは、中々腕は立つらしい。…貴様は、坊主と密通して居た遊女が何かか?まあいい、礼を言ってやる。」
冷ややかなその視線に耐えられなくて、目線をそらすと、時代劇でしか見たことのない甲冑…、そして腰携えられた日本刀のようなものが見えた。
「俺の名は知っているだろう。」
そして極めつけにこの少し偉そうな態度。