【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第5章 若菜色 - wakanairo -
「私は安土城の女中頭なので亜子様とご一緒には行けないのです。」
「…あ、」
「代わりにまだ未熟者ですがお雪をお連れ下さい。」
少し寂しそうな顔をした篠さんは、襖の奥に控えていた一人の女の子を手招きすると私に紹介した。
「雪でございます。」
「このお雪が、私の代わりに亜子様と共に家康様の御殿にご一緒します。」
「よろしくお願い致します。」
「亜子様と歳も近うございます。話し相手くらいにはなると思いますゆえ、どうぞお連れ下さい。」
頭を下げる彼女は、とても穏やかそうな雰囲気をした可愛らしい女の子だった。
篠さんは、これだけでも十分なのに、もっとたくさん着物を持たせてくれようとするから、慌てて止めた。きれいな着物は着なれないし、動きやすい小袖が数枚あれば足りるのに。
それに加えて白粉や紅などもたくさん持たせてくれようとするから、断るのが大変だった。
必要最低限のものがあればいい。
雪ちゃんは、準備があるからと、先に家康様の御殿に向かったため、一人で城門に向かった。