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【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -

第5章 若菜色 - wakanairo -






彼は私が嫌いなはず。



「そこまでしなくても、私、もう勝手に城を出たりしません…。」



嫌いな私を自宅に置くなんて家康様も嫌な思いをするだろうし、私だって居心地が悪い。声が震えそうになるのをなんとか押さえつけて言葉をつなぐも、信長様は涼しい顔をしてそれを一蹴した。



「家康にも貴様にも拒否権はない。」
「でも…、」
「家康の元に置くのは此奴が適任だからだ。異論は認めん。」



どうしよう、

不本意だろうと思って家康様の反応を伺うも、彼は口を結んだまま。適任って、どの辺が…?心の中で問いかけるも、答えが返ってくるわけがない。

下を向いて、どうしたらいいか考えていると、



「…さっさと準備しなよ。」
「…え?」
「面倒で鬱陶しいけど、信長様の意見は変わらないよ。さっさと荷物まとめて来て。」
「でも、」
「ゴネるあんたを、なだめすかす役目まで背負い込むのはゴメンだ。…じゃ、城門にいるから。」



立ち上がり、家康さんが部屋を出て行く。

信長様はその様子を悠々と眺めると、またニヤリと笑って私に早く準備をするように言った。

私に拒否権はない…、か。囮作戦に連れ出されたりしたけれど、信長様は記憶がなく素性の分からない私を無条件でここに置いてくれている。…嘘も付いているし、お世話になりっぱなしの私は反論できる立場じゃない。






仕方なく部屋に戻ると、



「…亜子様、篠でございます。」



襖を少し開いて篠さんが顔を出した。



「…篠さん、」
「家康様の御殿に行かれるとお聞きしました。荷物は既に準備しております。」
「…あ、ありがとうございます。」
「亜子様がお持ちになっていた荷物と、こちらで用意した着物です。足りない分は、あとで届けに参ります。」
「いえ、これだけで十分です。ありがとう。」



現代から持ってきた鞄と、綺麗な若菜色の風呂敷に包まれた着物を私に渡すと、

ぺこりとお辞儀する篠さん。



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