【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第5章 若菜色 - wakanairo -
部屋に戻ると待ち構えていた女中さん達に、すごく心配されて、篠さんには少し怒られながら、着替えと湯汲みをさせられた。
「どうか、私達に一言告げてお出かけ下さい。」
「…はい。」
「ふふ、怒ってはいません。心配しただけです。風邪を引いてもいけませんので、褥で温まって下さいな。」
「ありがとう、篠さん。」
にっこり笑う篠さんにお礼を言って、
日が昇りかけた部屋の中、冷めた身体を布団にくるまって温める。寝ずに夜を越したから、気づいたらもう夢の中にいて、目が覚めたのは昼過ぎだった。
怠い身体を起こして、ぼーっとしていると、女中さんに呼ばれ、私は信長様の部屋へと呼び出された。
礼をして中へと入り、恐る恐る中を見回す。
「来たか。」
信長様と会うのはあの日以来で、身体が硬くなる。悠々とした態度の信長様は、そんな私を見透かす様にニヤリと笑った。
そして、その横にいた家康様の顔を見て、私はさらに身体を硬くする。だって、すごく機嫌が悪そう。むっと閉じられた口に、寄せられた眉毛。触ったら今にも威嚇して来そうな猫みたいだ。
「…ご迷惑をおかけして申し訳ありません。」
「これに懲りたら、二度と勝手な真似はするな。無断で俺の元を離れることは許さん。」
逃げ出そうとしたわけじゃないにしろ、
誰にも告げず出て行ったため何も反論出来ず、こくこくと頭を動かしながらおし黙る。
…佐助くんに会っているところを見つかったら、私も彼も確実に捕らえられる。そう思うような信長様の迫力に、背筋が凍る。けど、ふっと顔を緩めて、
「本能寺の賊の調査に貴様を使うのはやめにした。」
そう仰るから、拍子抜けして口が開く。
「…え?」
「貴様が怯えて引き篭もり、また逃げ出されたら探すのが手間だ。だが、二度と俺の手元を逃げたりせんように見張りをつけることにした。」
「…見張り、ですか?」
「家康の御殿に貴様を預け、常時見張らせる。」
御殿って…。
とっさに、家康様の方を見る。不機嫌そうな顔をしている理由が、ようやくわかった。