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【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -

第4章 青褐 - aokachi -





「城下の外れの野原で、浪人らしき男に襲われてました。雨で足跡が残っていたので、見つけられたのが幸いです。」



彼は私の方をチラリと一瞥すると、起こったことを説明してくれる。詳しく話してみろ、とそう促されて、ポツリポツリと話した。全て話し終わると、その場の雰囲気が変わっていた。

3人の顔はひどく険しくなっている。



「………“信長の側女”と、相手はたしかにお前をそう呼んだのか?」
「はい…、あの、どういう意味なんでしょう?」
「簡単にいえば愛人だ。」



え?私が?信長様の?

一体何故そんな勘違いが起きているんだろうか。私が信長様の愛人なんてそんなの、ありえない。

唖然とする私の横で家康様が苛立たしげに眉を寄せた。



「雨音であの男の言葉がよく聞こえなかったけど…逃がすべきじゃなかったな。」
「え…どうし、」
「雨に濡れた左営で頭の中身がふやけたようだな、亜子。少し考えればわかるだろう。」



ポカンとする私を置き去りにして、3人は顔を付き合わせて話し込む。



「相手はお前の顔を知っていた。そして、信長様の愛人だという理由で連れ去ろうとした。つまり…その浪人は、信長様に敵対している立場にあり、お前を利用しようとしたんだ。」
「亜子が城へきたのはつい数日前。信長様の気に入りだという情報まで掴んでいるとなると…、」
「ただの小物ってわけじゃないみたいですね。剣の腕はヒドイものだったけど。」
「…野放しにはしておけない。信長様に報告する。亜子、お前は部屋にもどれ。もう勝手に出ていくなよ。」
「…は、い。」



なんだかよく分からないけれど、

大きく黒いものに包まれていくこの感覚。まだ暗い空が余計に不安を大きくしていく気がする。

私が今日城を抜け出したり、道に迷ったりしなければ、こんなに緊迫した雰囲気にはならなかった。今回のことがこんなに大ごとになると思ってなかった。
自分の思慮の浅さが露呈した気がして、申し訳なさに胸が押しつぶされそうになる。


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