【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第4章 青褐 - aokachi -
「佐助くん、」
同じ時代から来た彼。
彼なら少しは理解してくれる気がした。
佐助くんがどんなふうにこの時代に馴染んでいったのかは分からないけど、現代とこの時代の違いを知っているのは彼だけ。
…そういえば、佐助くんは城下にいるって言ってた、
狼煙の上げ方は分からない。
なるべく騒ぎは起こしたくないし、それなら、私が城下に彼を尋ねていけばいい。この時代から逃げ出すことは出来ないけど、誰かに私のこの気持ちを理解して慰めて欲しかった。
…行ったことは無いけど、城下への道筋は前篠さんが教えてくれた。
思い立ったらすぐに行動しなきゃ。
このどうしようもない気持ちを持て余すのは限界。
記憶を無くしてると思われてるから、城下に友達を尋ねにいくなんていえないし、逃げ出したと思われるかもしれない。良くしてくれてる皆さんには申し訳ないけれど、誰にも告げず、夕食の準備でバタバタしている時間帯を狙って城を抜け出した。
「…、」
傾いていく日に向かって息を潜めて歩き続ける。
運悪くポツポツと降り始めた雨と、黒い雲が、視界を真っ黒に染め始めた頃、私はふと辺りを見回して、
「…道間違えた、?」
やっと気づく。
城下までどれくらいの時間がかかるか聞かなかったけれど、これはあまりに遠すぎる。時計がないから、どれくらい時間が経ったのか分からないけれど、とっくに夕餉の時間は終わっただろう。
もう篠さんたちは私が消えたことに気づいてるはずだ。このまま、佐助くんを尋ねて城下に行き着いたとしても、彼に会える可能性は低い。
…とりあえず元来た道を辿ろうと、足を止めた時、背後から水を跳ね飛ばす音が聞こえてきた。
足音…?
「一人で出歩くとは不用心な。さすがはあの大うつけ、信長が囲っている女というべきか。」
声が聞こえて振り向くと、体格の良い男性が刀を手にこちらへ近づいてくる姿が目に飛び込んでくる。
「騒ぐな。まぁ騒いだとところでこの雨じゃ悲鳴も聞こえないだろうが。一緒に来てもらうぞ。恨むなら信長を恨むんだな。」
「…きゃっ、」
雨に濡れた太い腕が、私の方へを伸ばされたその時、雨音を冷ややかな一声が引き裂いた。
「ーーーその女に触れるな。」
…徳川家康、
男の後ろにふわりと黄色が見えた。