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【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -

第3章 刈安色 - kariyasuiro -





体温が上がって、顔が紅くなるのを感じて、私は慌てて部屋に引き返した。その後を笑顔で付いてきてくれる篠さんにポツポツと話す。



「…篠さん、私自分のことは自分でしたいんです。」
「はい。」



この時代に早く馴染むためにも、



「着付けの仕方も、文字の読み書きも、」



時の数え方だって分からない。
戦国時代の姫様がどんな暮らしをしてたか分からないけど、自分で出来ることは自分でしていたいから。

そう言うと、少し悩んだ後、篠さんはにっこり笑って分かりましたと言ってくれた。



「私達は亜子様のお手伝いを致しましょう。」
「ありがとうございます!」



それでも身の回りのお世話はさせて下さいね、という篠さんに、母のような温もりを感じる。

「記憶を無くしていらっしゃるので不便なことも多いでしょう。着付けや日常のいろはなどは教えて差し上げられます。しかし、文字の読み書きは私共が師では不十分です。適任者を探しますゆえ、文字のお勉強については少々お待ちくださいませ。」

そう言ってぺこりと頭を下げる篠さんに、私の方が慌てて頭を下げる。



「何から何までありがとうございます…!」



そういうと、篠さんは嬉しそうに顔を綻ばせて、



「安土城には殿方ばかりで華がないので、みんな亜子様のような美しい姫様が来たことを喜んでいます。私も娘が出来たようで嬉しいのです。
困ったことがあれば何でもお力になります。」



そう言ってくれるから、思わず篠さんに抱きついてしまっていた。あらあら、と笑いながらも、甘やかしてくれるその腕の中で、微笑む。

とても力強い言葉だった。

右も左も分からないけれど、この時代で暮らすためには私が此処に馴染むしかない。佐助くんのようにこの時代を楽しむことは出来ないかもしれないけど、元の時代に戻れるまで暮らす覚悟ができた気がする。



「ありがとう、篠さん。」



敬語を辞めて、ギュッと抱きつく腕に力を込めると、篠さんは柔らかく髪を撫でてくれた。



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