【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第3章 刈安色 - kariyasuiro -
翌日まだ日が昇りきっていない時刻に目が覚めた。
「あら、亜子様お目覚めですか?」
「あ、篠さん、おはようございます。」
ボーッと襖を少し開けて縁側を眺めていると、篠さんがやって来て、パタパタと部屋の襖を開けていき部屋に光を取り込んでいく。
私も立ち上がり布団を片付けようとすると、姫様にそんなことさせられないと凄い勢いで止められた。何人か他の女中もやって来て、あっという間に身なりも整えられていく。その様子をまた他人事のように見入っていたら、部屋に朝餉が運ばれて来た。
「ゆっくりお召し上がり下さい。」
そういうと、女中さん達は皆下がっていき、部屋にポツンと一人取り残される。
この時代のお姫様は、みんなこんな生活をしているんだろうか。女中さんがお世話をしてくれるから、自分で何もすることはないし、身分の差を気にしてかご飯も一緒に食べてくれない。
「はあ、」
白米にお味噌汁、魚と言ったとても美味しい料理が並ぶ御膳を見ても心が踊らないのは、一人だからだ。
あまり減ってないお腹に無理やり朝餉を詰め込んで、御膳を持って廊下に出る。昨日教えてもらった台所へと向かっていると、ちょうど向こうからやってきた女中さんが、慌てて私に近寄ってくる。
「亜子様置いておいてくださいませ、私が…」
「あ、いえ、自分でやります。」
「姫様にそんなことさせられませぬ、」
「大丈夫です。私がやりたくてやってるので、」
こんなに至れり尽せりなのは性に合わない。
それに私は姫様じゃないし…、なんて思いながら女中さんを振り切って台所に行くと、みんな慌てたようにパタパタとこちらにやってきて私から御膳を奪い取っていった。篠さんに叱られそうになっている女中さんを庇いに行くと、亜子様はしっかりしていらっしゃる、と褒め称えられて、なんだかむず痒い。
しっかりなんてしてないのに…。