【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第3章 刈安色 - kariyasuiro -
部屋の中を見渡せば、
逃げ出した時に天幕に忘れていた現代の服と鞄が文台の上に置いてあった。
その中からスマートフォンを取り出して触ってみても電池すらつかない。当たり前か…。もうこの時代に来て丸一日たつし、元々電池は残り少なかった。動いても電波がないから連絡も取れないのは分かってるけど…、少しでも望みをかけてみたのに。
「はあ…これからどうしよう…。」
膝を抱えて丸くなって、自分の置かれてる状況を整理してみる。
私が行方不明になったことに気づいてくれるのは、一体いつだろう。一人暮らしをしているし、親とは週に1度くらいしか連絡を取っていない。
やっと夢を叶えたばかりなのになあ、
なんて、現代のことに思いを馳せていたら、天井裏から、コンコンと扉を叩くような音がした。見上げると、一つ外れた板の間から忍者の顔が覗く。
「…佐助くん?!」
そう叫ぶように言うと、しーっと指を口元に持っていく彼に慌てて口を閉じた。
「突然消えてごめん、亜子さん。」
「びっくりした…、どうしてここがわかったの?」
誰か来たから身を隠したけど、君の後をつけていたんだ。と話す佐助くんに、彼は本当はこの時代の人だったんじゃないかという錯覚に陥る。
だって身を隠していただけで後をつけていたのも何も気がつかなかった…。
「大体の経緯は見た。」
君は織田の武将たちにとても気に入られてるんだね。そう言って佐助くんは、無表情を崩して、困ったように眉を寄せる。
「これじゃあ一緒に逃げ出すのは得策じゃない。」
「…うん、だよね。」
私が逃げたら、きっと信長様はまた捕まえにやってくるだろう。その時佐助くんと一緒だったら、彼まで誤解を受けて捕らえられかねない。