【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第17章 浅蘇芳 - asasuou -
そう言いながらも、
いつも通り飄々としている三成の様子に、秀吉は少し面食らう。
恋が始まる前に、終わりを知らされたようなものなのに
こんなに飄々としていられるものなのだろうか。
そう言えば、
「家康様と恋仲であろうと、私が亜子様をお慕いする気持ちは変わりませんから。」
と言ってのけた三成に、
秀吉はもう一度深くため息をつくと、それは家康には絶対言うなよ、と念を押す。
「…噂のことも、亜子には気づかれないよう気をつけてくれ。」
「畏まりました。」
物分かりがいいのか悪いのか。
寝癖をつけたままの頭を下げた三成が、廊下の向こうに消えるのを見送ると、秀吉は、今日何度目かわからないため息をつく。
ふと、そこで、亜子の部屋のあたりから、
見たことのない女中が出てくるのが目に入った。
「あんな女中いたか?」
秀吉は人の顔は一度見たら忘れない。
安土城にいる女中の顔もだいたいは知っている。
…また光秀の忍びか?
名前についていた女中があいつの忍びだったのは知っているが、もう名前の疑いも晴れているし、そんな報告は聞いてない。
不思議に思って、
ちょうど廊下を歩いてきた女中に尋ねると、
「ああ。最近安土に来た者で御座います。」
「…亜子の世話係か?」
「はい。亜子様と年が近いからと自ら志願しておりました。働き者ですので御安心下さい。」
「…そうか。」
そう言われて、
何だか腑に落ちない気もしたが、秀吉はそのまま追求することもなく自分の御殿へと戻った。