【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第17章 浅蘇芳 - asasuou -
でも亜子はもう家康のものだ。
誰かが教えなければ、こいつは自分の気持ちにもあいつらの関係にも気づかないままだろう。
「三成。お前が亜子を慕っている、というのは、恋というやつじゃないのか?」
「…恋、ですか?」
「ああ。」
「そう、ですね…、恋とはどういうものか不確かですが、それに近しいものはあるかもしれません。亜子様はいつも輝いて見えますから。」
「…そうか。」
「…でもその噂と、私の気持ちと、亜子様が城下に行くのを禁止していることとどんな関係が?」
そう思って意を決して言ったのに、
相変わらずぽかんとしたままの家臣に、
深くため息をついた秀吉は、
「三成、お前が亜子のことが好きなら言いづらいんだが…、家康と亜子は恋仲だ。」
そう告げた。
その言葉に、三成は目を丸くて、何か考え込むように眉を寄せる。
自分の気持ちが不確かな状態なのに、既に相手が誰かのものだと知るのは辛いだろう。
戦術においては右に出るものはいないくらい長けているのに、
人や自分の気持ちには鈍感だなんて、三成の頭の中の偏りは激しすぎる。
だが、三成は、その言葉に納得したように、
いつもの微笑みに戻った。
「…そういうことなのですね。家康様と萩姫様の噂を亜子様に聞かれないように、と。」
「ああ。家康は萩姫を嫌っているし、この噂は事実無根だ。だが、亜子を無駄に不安にさせないためにも、噂が消えるまでは、な。」
「…たしかに、私は家康様と萩姫様の関係をあまり知りませんが、家康様はあの方をひどく避けているようでした。…でも、何故そのような噂が?」
「調べたら、やはり出所は萩姫だった。あいつが懐妊したという様子もない。…意図は分からんが、どうしても家康が欲しいんだろうな。」
「…難しい、ですね。」