【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第17章 浅蘇芳 - asasuou -
〔 家康目線 〕
名前が三成と城下に行ったと聞いて、
三成に対する苛立ちより先に、
亜子があの噂を耳にしていないかが気になった。
でも、その確認が出来るはずもなく、城下に出るなとしか言えなかった。もし耳にしていても、亜子が尋ねてくることは無いだろうけど…、
三成が付いていたなら大丈夫か、
とそう思って。
領地に戻ると言えば、
少し寂しそうな顔をした亜子。
戦から帰ってきたばかりで、亜子とゆっくりする時間を取りたいとは思うけど、まずは早急に片付けなければならないことがある。
「家康様!おかえりなさいませ!」
「…ああ。」
そう思って、急ぎ国に戻った。
駆け寄ってきた家臣たちに適当に返しながら、政の確認をして、部屋に一人の家臣だけを残す。
「…お怪我をされていると聞いて心配しましたが、お姿を見れて安心しました。」
「ああ。」
「それより、家康様。私一人お残しになる理由は、祝言の話を進めるということでよろしいですか?」
「…ちがう。」
俺の顔をニヤニヤしながらみるこの男。
…本多正信
この男がいるから国を離れて安土に向かうことが出来る、というくらい行政において才のある男だ。
きっと、俺が帰ってきた理由も気づいて、こう言っているのが分かるから、そのニヤついた顔に余計に苛立つ。
「…いやあ。まさか、家康様が女子と婚姻前にお子を成されるとは思いませんでしたよ。」
「だから違うと言っているだろ。」
「萩姫様、でしたか?腹が膨れる前に祝言を挙げなければなりませぬな。」
「…正信。いい加減にしろ。俺は萩姫とはそういう関係じゃ無い。噂は全くの事実無根だ。分かってるでしょ。」
からかうように矢継ぎ早に言うから、
大きくため息をついてそういうと、少し残念そうにしながらも、分かってますよと言われる。
正信も、俺の家臣の中で、早く良い人を見つけて婚姻を結べと煩い方だから期待はしていたのだろう。
だが、こいつには萩姫の話はしてあったから、噂を聞き、火消しの作業も進めていてくれたようだ。