【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第17章 浅蘇芳 - asasuou -
「秀吉様。」
「おー、三成、どこ行ってたんだ?」
「亜子様と少し城下へ。」
「名前と?」
亜子と城下へ行っていた。
そういう三成の言葉に、秀吉は眉をひそめた。それを見て三成は微笑むと、大丈夫ですよ、と返す。
「ご安心下さい。亜子様とは反物をみに呉服屋に行っただけです。」
「…そうか。何も無かったならいいんだ。」
「針子の仕事に精を出されているようで、反物をご自分で選びたいと仰っていました。…信長様も戻られましたし、誰かと御一緒なら城下に出るのを許して差し上げても宜しいのでは?」
「…ああ、そうしてやりたいのは山々なんだがな、」
戦が終わって、信長様も戻られて、
顕如を捉え損ねることにはなったうえに、上杉との協定も解除したとはいえ、あいつらがもう亜子を攫いにくることは無いだろう。…いや信長様が、上杉が攫いにくることはあるかも知れないと言っていたな。
だが、俺たちの誰かと一緒ならあいつが襲われることはまずない。だからそう言ってやってもいいんだが、
…問題はそこじゃないんだ。
あいつが攫われること、
狙われること、
そんなことを恐れてるんじゃ無くてな。
そう思いながら秀吉は頭をかく。
「三成は戦から帰ってきたばかりで知らないか。」
「何をですか?」
「城下の噂だ。家康と萩姫様の間に子ができたという噂が広がっている。」
「…それが、どうかされましたか?」
ぽかんとした表情の三成に、秀吉はさらに頭をかく。
三成は恋路に鈍感なのはしっていたが、
やっぱり全く気づいていないか。
信長様をはじめ、俺や政宗、光秀はとっくの昔に気づいていたから、今さら驚きもしないが…、三成が亜子と家康が恋仲になったと知ればどんな反応をするんだろうか。
それに、三成は己の心にも鈍感だからな、
「…おまえ、亜子のことどう思ってる?」
「亜子様ですか?…はい、お慕いしていますよ。」
「それはどういう意味でだ?」
「どう、とはどういうことでしょう?」
「…はあ、」
字の勉強をしたり、
こいつが読書を後回しにして、まで亜子に構っているのを俺は知っている。きっと
恋、
とやらが芽生えているのだろうが…、
気づいてないようだ。