【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第17章 浅蘇芳 - asasuou -
「…明日から少し国に帰る。」
「…え?」
「戦も終わったし、政の状況を確認しに行くだけだから、すぐ戻る。だからまた少しの間会えない。」
「…そう、なんですね、」
そう言われて、
家康さんが国の主であることを思い出す。
こんなに近いけど、
とても遠く感じるくらい、
徳川家康、その名は大きい。
つい昨日安土に帰ってきたばかりなのに、また会えなくなるのかと思うと寂しいけれど、
そんなこと口には出せなかった。
「分かりました。…気をつけて行って下さいね。」
「戦に行くんじゃないんだから。」
「そうですね…、」
「出来るだけすぐ戻る。だからまたここで大人しくして待っていて。」
「はい。…いってらっしゃい。」
こんな会話をするのはもう何回めだろう。
討伐に行くわけでも、戦に行くわけでもないのに、すごく胸が嫌な感じになるのは、私がただ不安を口にできないからだろう。
そんな私に呆れたように優しく笑うと、
家康さんはひとつ優しく口づけを落として、部屋を出て行った。
「…はあ、」
すごくすごく甘くて、
しあわせ
のはずなのに、何でこんなに不安定なんだろう。
きっと私がこの幸せを手にしていいのか、まだ心を決めれていなくて、そして、彼を本当に信じきれていないから。
そう分かっていても、
この胸の奥に巣食う気持ちはどうにも出来なかった。