【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第17章 浅蘇芳 - asasuou -
「どうかされたのですか?」
「…あのね、城下に反物を見に行きたいんだけど、秀吉さんに城から出るなって言われてるから、許可をもらおうと思って。」
「ああ、そうなのですね。それなら私がご一緒しますよ。」
「え?でも、」
「私の今日の分の仕事はもう片付きましたし、秀吉様が亜子様を心配される気持ちも分かります。攫われたばかりですし、私も心配です。よければご一緒させて下さい。」
申し訳ない、
そう言っても一緒に行かせて下さいと逆にお願いされてしまって、私はそのまま三成くんの言葉に甘えることにした。
二人で城下におりて、
目当ての呉服店で反物を見る。
「…わあ、この反物すごく色が綺麗、」
「そうですね。きっと亜子様によく似合うと思いますよ。」
「ふふ、三成くん、私のじゃないよ。私に仕立てを依頼してくれた方の娘さんのなの。」
「あ、そうなのですか?…ですが、その反物はきっと亜子様にもよく似合います。」
「そうかな?この藤色は三成くんみたいだよ。」
そんな話をしながら反物を選ぶ。
悩んで中々決められなくて時間がかかっても、三成くんは嫌な顔一つせず私に付き合ってくれた。
「ありがとう三成くん。」
「いえ、いいのですよ。私も亜子様と過ごせて楽しかったので。」
「…あ、今度お礼に三成くんにも何か縫わせてほしいな。何か欲しいのがあれば考えておいてね。」
「お礼なんて要りませんよ。」
「でもせっかくの休みを潰しちゃったから。」
私の作ったものがお礼になるかは分からないけど、
と自嘲気味に言う。
それでも作らせて欲しいとお願いすると、嬉しそうに顔を綻ばせてお礼を言われた。まだ作れていないし、お礼を言うのは私の方なのに。城に戻る道をそんな風にお礼を言い合いながら歩いていると、あっという間に城門についた。
話に夢中だったから、
私の耳に城下で囁かれている噂は入ってこなくて、
それに少し安心する。
「…今日は本当にありがとう、三成くん。」
「またご一緒させて下さいね。」
もし、あの噂を自分の耳で聞いて仕舞えば、
私はさらに不安になっていただろうから。