【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第17章 浅蘇芳 - asasuou -
彼女はよく動く子で、
私のお世話をしようと意気込んでいるから、
篠さんや雪ちゃんに言ったのと同じように、できることは自分でやりたいと言ったのだけど…。
部屋の掃除をしようなら部屋から追い出され、
食事を自分で運ぼうにも取り上げられ、
ましてや女中さんの手伝いをしようものなら、
「亜子様にそんなことさせられません!」
そう、
部屋に戻るように言われる。
他の女中さんは困ったように笑いながらもやらせてくれたのにな、なんて苦笑いしながら、
私は針子の仕事と勉強に精を出すしかなかった。
針子の仲間たちと、
その日の仕立て分の仕事を分けて、納品をする。
現代で呉服屋のお店の人に聞いた着物の仕立てについての話は、今の私にとても役立っていて、針子の仕事はとても楽しい。
最近やっと、私個人に依頼が来たりするようになって、
仕事に集中出来るから、
逆に有り難いかもしれない。
でもただ問題なのは、
依頼が来ても城下に出る許可がまだ下りていないから、納品にも反物の仕入れにも行けない事だ。
ダメ元で秀吉さんにお願いしてみよう…。
そう思って秀吉さんを探しても全く見つからなくて、御殿にいるなら会えないし、一人で出て行ったらすごく怒られてしまいそうだし、と考え込む。
「亜子様?」
ぼうっと考えていたから
後ろから声をかけられて思わずビクリと肩が跳ねた。
「わっ…、三成くん、」
「驚かせてしまい申し訳ありません。何か考え事ですか?」
「うん…、あ、三成くん、秀吉さん知らない?」
「秀吉様でしたら今、天主にいらっしゃるのではないでしょうか?会議があると仰っていましたので、」
「そっか、」
私が驚いたことに驚いたのか、
目を丸くしていた三成くんに苦笑いをして尋ねたけれど、今は秀吉さんには会いに行けそうにない。
いつものように城に運び込まれる反物から着物を仕立ててもいいんだけれど、やっぱり自分に来た依頼は自分でいい反物を見つけたい、
そう思ってため息をつくと、
三成くんが心配そうに顔を覗き込んできた。