【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第17章 浅蘇芳 - asasuou -
「…雪ちゃんは私にとって、私の唯一の女の子の友達なの。一緒におしゃべりしたり、例えそれが仕事だったとしても楽しかったから。」
「…亜子様、私が友達だなんて、そんな、」
「…逆に私はお礼を言わなきゃ。ずっと守ってくれてたんだね…、ありがとう雪ちゃん。」
「…亜子様、」
同じ女なのに、
同じ距離を走っても息切れ一つしてなくて、
男の人を相手に私を守ってくれた人。
雪ちゃんが謝る必要なんてひとつもない。
私の方こそ謝ってお礼を言わなきゃ。
もう一度ぎゅっと抱きついて、お礼を言うと、小さく微笑んでくれた雪ちゃんに、私の心はとても安心した。この時代の唯一の女の子の友達。
無事で良かった、
そんなことを思っていたら、さっきまで胸の中を占めていた不安は、影を隠していた。
雪ちゃんに抱きついた体を離し、
春日山城に私が連れ去られてからの話をしていたら、
あっという間に日は落ちた。
「…亜子様、」
「うん。」
「私は忍びなので明日からまた通常の業務に戻ります。」
「…あ、」
亜子様の疑いも解けていますし、
上杉との一時的な協定は解除されましたが、当分戦は起きません。顕如ももう再起は不能です。喜作殿も領地におかえりになられたので、亜子様のお世話は本来の女中がすることになります。
そう、雪ちゃんに言われてハッとした。
「そう、だよね。」
「…はい。ですが亜子様のためなら私はいつでも駆けつけます。」
「…ありがとう雪ちゃん。時間がある時、またこうやって話したりできるかな…?」
「はい。いくらでも。」
雪ちゃんは、本当は忍びで、
私のお世話ではなくもっとちゃんとした仕事がある。
とても名残惜しいけど、
引き止めるわけにはいかないから。
時間をつくってお顔を見に来ます、そう言ってくれた雪ちゃんに微笑んで、部屋から出ていくのを見送った。
次の日、朝一番に、
私の身の回りの手伝いをします、
と言ってやってきたのは私より少し幼い感じの女中さんだった。少し篠さんかな、と思って期待したけれど、篠さんも女中頭で忙しいか…。