【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第17章 浅蘇芳 - asasuou -
「…そういえば、別れ際佐助が、」
「佐助くん?」
「…あいつが今度会いにくると言ってた。敵だけど、何か、あんたに大事な話があるらしいから。わーむほーる、とかなんとか、」
「…っ、それは、」
「亜子がここに来る原因になったものなんでしょ?だからその時は俺も一緒に、って事で話はつけてある。」
亜子がまだ元の世を捨てきれないのは分かってる。
それでも俺を選んでほしいと思うのは我儘かもしれない。でも、絶対にこの手で守って幸せにしたいから。もしもの時に対処できるように、わーむほーるとやらの話は俺も聞いておくべきだと思った。
佐助は、何故か喜んで俺の手を取りぶんぶん振っていたけれど…。
「上杉の忍びが安土に足を踏み入れるのは問題だけど、しょうがないから城下で会う予定だ。」
「…はい。」
信長様にも亜子のこと話さなきゃならないけど、それはもう少し後でいいだろう。話したら、あの人は何が何でも、この子をこの時代に残らせるようにするだろうから。
亜子が自分で生きる時代を決めるまで、
それまで黙っていよう。
もし、この子が元の時代を選んだとして、それを俺は受け入れることは出来ないかもしれない。それなら俺のことを選ばずにはいられないくらい、うんと愛してしまえばいい。…決断するまで待っていてあげる。
「…じゃあ、今日は帰る。」
「え?」
「何、…まだいてほしいの?でもダメだよ。俺も男だからこれ以上ここにいたら我慢できないかもしれないし。」
「………ッ、」
「今日は暖かくしてもう寝て。」
またからかうようにそういうと、体を離した。
少し触れ合うだけで顔を真っ赤にして、心臓を大きく鳴らして。そんな反応が可愛くて仕方ないけど、こんなんじゃいつまでも次の段階へは進めない。それに、未だに敬語のままだし、
…まだ片付けないといけないこともある。
堂々と#名前#と恋仲だと言って、御殿に住まわすことが出来るまではこの触れ合いで我慢しよう。初めては、俺の部屋の暖かい褥で甘やかしたいから。
「おやすみ。」
「…はい。おやすみなさい。」
触れるだけの口づけでは物足りないけど、
それだけで頬を真っ赤に染めるかわいい恋人の、その反応に満足して、部屋を後にした。