【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -
第17章 浅蘇芳 - asasuou -
分かりやすい亜子をからかうように言えば、ビクッと体を跳ねさせて謝るから、
「ごめん、怒ってなんかない。でも、」
「………、」
「ちょっと、寂しかったのは本当。」
そう耳元で囁けば、
さらに顔を真っ赤にして、亜子は困ったように俺を見上げた。その顔が可愛くて、今度は唇に口づけを落とす。抱きしめている体温と、心拍数が上がったのを感じて頬が緩んだ。
しばらく、そのまま抱きしめて、不意に視線を下ろした亜子が俺の手を取る。
「…傷だらけ、」
ボソリと呟かれた言葉。
たしかに今回の戦で傷は増えた。
今川の残党に付けられた傷のひとつも完治せずに開いてしまったが、こんな傷大したことない。
それでも亜子は心配なのか、俺の腕の中からするりと抜けだすと軟膏を丁寧に傷に塗り広げた。
「…放っておいても治るよ。」
「でも、早く治るに越したことはありません。」
「………その軟膏も亜子が作ったの?」
「え?」
「佐助に薬学の勉強をしてるって聞いた。」
それに、と言って文机に広げられた本を指差すと、亜子はまた苦笑いをこぼして、
まだまだなんです。治りは普通なんですけど、塗らないよりマシだから塗らせてください。
そう言って俺の傷のひとつひとつに丁寧に薬を塗り続ける。それが一通り終わるのを待って、その体をもう一度腕の中に閉じ込めた。
「…なんで、薬学の勉強を始めたの?」
「……傷ついてる人を見て何も出来ないのは不甲斐なかったからです。私のいた時代では、知識なんてなくても薬を処方できたけど、この時代は知識がなくちゃ何もできないから。」
「そう。なら、今度から俺が教えてあげる。」